
こんにちは。お庭マエストロ、運営者の「なおと」です。
背の低い花を使ったガーデニングって、庭の印象をぐっと引き締めてくれる魅力がありますよね。メインのシンボルツリーや花壇の背景としてだけでなく、地面そのものを彩る「生きたカーペット」のようになってくれるのが、本当に素敵だなと思います。
でも、いざ挑戦しようとすると、「雑草対策になるっていうけど、どんな品種を選べばいいの?」「日陰でも育つ、手間いらずで植えっぱなしにできる宿根草や多年草ってあるのかな?」「アジュガみたいな半日陰で活躍する植物をもっと知りたい」…こんな風に、品種選びや管理の方法で悩んでしまうこと、ありませんか?
低い位置で咲く花々は、お庭の足元を彩る景観的な美しさだけでなく、雑草を抑えたり、土の乾燥や流出を防いだりと、機能面でもすごく優秀なんです。私自身、いろいろな品種を試しながら、その使いやすさや管理のコツを学んできました。成功もあれば、もちろん失敗(蒸らしてしまったり、思ったより広がりすぎたり…)もありましたね。
この記事では、そんな私の経験も踏まえながら、背の低い花々をガーデニングに取り入れるための具体的な方法や、環境別のおすすめ品種、そして美しく保つための管理のポイントを、さらに詳しく分かりやすくご紹介していきたいなと思います。
ポイント
- 背の低い花(グランドカバー)の雑草対策効果
- 日陰や半日陰など環境別のおすすめ品種
- 草姿を低く保つための管理技術(摘心・切り戻し)
- 注意したい病害虫対策と対処法
背の低い花で彩るガーデニングの魅力
お庭づくりというと、どうしても目線の高さにある花や木に意識が向きがちですが、実はガーデンの印象を決定づける重要な要素の一つが「足元」なんです。背の低い花々が地面をしっかりカバーしていると、庭全体に統一感が生まれ、主役の植物たちがより一層引き立ちます。
まずは、そんな「背の低い花」たちがガーデニングにおいてどんな役割を果たし、どんなメリットをもたらしてくれるのか、その基本的な魅力から詳しく見ていきましょう。地面を覆うグランドカバーとしての機能性や、ご自宅の環境に合わせた品種選びが最初の大きなポイントになりますね。
雑草対策になるグランドカバーとは

ガーデニングを楽しむ上で、おそらく最も多くの方が頭を悩ませるのが、あのしつこい「雑草」との戦いではないでしょうか。特に梅雨時から夏にかけての雑草の勢いは、本当にすさまじいものがありますよね。
グランドカバープランツは、まさにその悩みを「植物の力で解決する」ための心強い味方です。
グランドカバーとは、その名の通り地面(グラウンド)を覆う(カバー)性質を持つ植物のこと。ガーデニングでは、一般的に草丈が30cm以下、特に地表を覆う目的では15cm以下の、横に這うように広がる(匍匐性)品種を指すことが多いです。
では、なぜこれが雑草対策になるのか、そのメカニズムをもう少し詳しく見てみましょう。
グランドカバーによる雑草抑制のメカニズム
- 光の遮断(物理的防御): 植物の葉がマット状にすき間なく広がることで、地面に日光が届かなくなります。多くの雑草の種は、発芽するために一定量の光を必要とするため、これを物理的に遮断することで、雑草の発芽そのものを強力に抑制します。
- 養分と水分の競合(生態的防御): グランドカバープランツは、地表だけでなく地中にもびっしりと根を張ります。これにより、雑草が根を伸ばすスペースや、成長に必要な水分・養分を奪い合います。先に根付いたグランドカバーが優勢になることで、雑草が生育しにくい環境を作り出します。
これにより、雑草が生えにくい環境を意図的に作ることができるんです。もちろん、植物ですから「完全にゼロにする」のは難しいですし、植え付け初期はまだすき間があるので雑草も生えてきます。ですが、一度しっかりと地面を覆ってくれれば、あの面倒な草むしりの労力を大幅に減らせるのは、本当に大きなメリットだと思います。
さらに効果を高めるには?
雑草対策の効果を最大化したい場合は、植物を植え付ける前に、まず地面をならして防草シートを敷き、その上から植え付ける(シートに穴を開けて植える)方法も有効です。ただ、シートが劣化したり、シートの上に土が溜まってそこから雑草が生えたりすることもあるので、一長一短はありますね。
宿根草や多年草を選ぶメリット
背の低い花を選ぶとき、選択肢は大きく「一年草」と「宿根草・多年草」に分かれます。一年草は、その年限りですが安価で華やかな花を楽しめるのが魅力です。一方で、長期的なガーデニング、特に手間を減らしたいグランドカバー用途では、私はできるだけ「宿根草」や「多年草」を選ぶようにしています。
この2つは厳密には少し違いますが(宿根草は冬に地上部が枯れ、多年草は枯れないものも含む)、ここでは「一度植えれば、何年もそこで生き続けてくれる植物」として捉えてください。
宿根草・多年草の主なメリット
- 経済的・省力的なメリット: 最大のメリットは、植え替えの手間が圧倒的に少ないことです。一度植え付ければ、毎年花を咲かせてくれる(あるいは葉を茂らせてくれる)ので、毎シーズン苗を買ってきて植え替える必要がありません。初期費用は一年草より高くつくかもしれませんが、数年単位で見ればコストパフォーマンスは非常に高いと言えますね。
- 景観的なメリット(株の充実): 年数を重ねるごとに株が大きく育ち、より広範囲をカバーしてくれたり、たくさんの花を咲かせてくれたりします。植えた初年度よりも2年目、3年目と、どんどんその場所の景観に馴染んで充実していく様子を見るのは、ガーデニングの大きな喜びの一つです。
- 通年での機能性(常緑品種): アジュガやツルニチニチソウ、シバザクラのように、冬でも葉を落とさない常緑性の品種を選べば、一年中、庭の緑を保つことができます。これは、冬の寂しい景色を防ぐだけでなく、冬場の土壌の乾燥や霜柱による土の持ち上がりを防ぐという実用的なメリットにも繋がります。
もちろん、数年に一度は株が混み合いすぎて蒸れやすくなったり、中心部が枯れてきたりすることがあるため、「株分け」(株を掘り上げて分割し、植え直す作業)が必要になることもあります。ですが、これは植物を若返らせ、さらに別の場所に増やすチャンスでもあります。基本的には「植えっぱなしOK」な手軽さが、宿根草や多年草の最大の魅力かなと思います。
手間いらずで育つ植えっぱなし品種
「ガーデニングは楽しみたいけど、あまり手間はかけられない…」「ズボラな私でも育てられる植物がいいな」というのは、皆さん共通の悩みかもしれません。私自身も、できるだけローメンテナンスなお庭を目指しています。
そんな方には、まさに「植えっぱなし」にできる、強健で手間いらずな性質を持つ品種がおすすめです。
手間いらずな品種の代表例
- クラピア(Kurapia): 踏みつけに非常に強く、芝生の代わりにもなるほど。繁殖力も旺盛で、あっという間に地面を覆ってくれるため、雑草抑制効果は抜群です。芝生のような頻繁な刈り込みも必要ありません。
- クリーピングタイム(Thymus serpyllum): ハーブのタイムの仲間で、匍匐性の品種です。乾燥に強く、水はけの良い場所を好むため、日当たりの良い斜面や石垣の間などに最適。上を歩くと良い香りがするのも大きな魅力ですね。
- アジュガ(Ajuga reptans): 後ほど詳しく紹介しますが、半日陰でも元気に育つ代表格です。耐寒性も強く、ランナー(匍匐茎)を伸ばしてどんどん増えてくれます。
これらの植物は、一度根付いてしまえば、よほど過酷な環境(極端な乾燥や水はけの悪さ)でない限り、放任でもある程度元気に育ってくれます。
もちろん、完全に「何もしなくていい」わけではなく、植え付け初期の水やりや、広がりすぎた時の間引き(カット)は必要です。ですが、毎日の水やりや頻繁な肥料やり、薬剤散布などをしなくても景観を維持しやすいのは、忙しい現代のガーデナーにとって本当に助かるポイントですね。
日陰でも育つおすすめの背の低い花
「うちの庭は日当たりが悪くて…」「大きな木のせいで、いつも日陰になってしまう」と悩んでいる方も多いかもしれません。日当たりが良い場所は植物の選択肢も多いですが、日陰となるとなかなか難しいですよね。
でも、諦めるのはまだ早いです!植物の世界は奥深く、直射日光が当たりにくい「日陰」や「半日陰」の環境を好んで育つ、背の低い花もたくさんあるんですよ。
日陰の種類を知ろう
まず、「日陰」と一口に言っても、その環境は様々です。ご自宅の日陰がどのタイプかを知ることが、品種選びの第一歩です。
- 半日陰(明るい日陰): 1日のうち、数時間(3〜4時間程度)は直射日光が当たる場所。または、木漏れ日のように常に明るい光が差し込む場所。多くの植物が育てやすい環境です。
- 日陰(暗い日陰): 1日を通して、ほとんど直射日光が当たらない場所。建物の北側や、常緑樹の真下などがこれにあたります。
- ドライシェード/ウェットシェード: 上記に「乾燥」か「湿潤」かの要素が加わります。例えば、木の真下は雨が当たりにくく乾燥しがち(ドライシェード)、建物の北側で水はけが悪い場所は湿りがち(ウェットシェード)になります。
そんな日陰環境でも活躍してくれるのが、以下のような品種です。
- アジュガ
- リシマキア
- ツルニチニチソウ
- (その他、ギボウシ、ヒューケラ、クリスマスローズなども日陰に強いですが、グランドカバーとは少し性質が異なりますね)
これらの植物は、強い直射日光が苦手だったり、ある程度の湿気を好んだりする性質を持っています。日向では葉焼けしてしまったり、育ちにくい場所、例えばシンボルツリーの足元(株元)や、フェンス沿い、建物の北側などで大活躍してくれるはずです。
アジュガなど半日陰を好む品種

日陰・半日陰ガーデンの代表選手といえば、やはりアジュガ(Ajuga reptans)ですね。シソ科の植物で、私も大好きで、庭のあちこちに植えています。
アジュガの最大の魅力は、春(4月〜5月頃)に咲く青紫やピンクの花穂もさることながら、やはりその美しい葉にあります。花が咲いていない時期も、カラーリーフとして地面を彩ってくれるんです。
- ‘チョコレートチップ’:葉が細長く、濃い銅色。コンパクトにまとまります。
- ‘バーガンディグロー’:クリーム色やピンクの斑が入る、非常に美しい品種です。
- ‘ピンクライトニング’:緑の葉にクリーム色の縁取りが入り、ピンクの花が咲きます。
耐寒性もあって、常緑なので冬も楽しめます。ランナー(匍匐茎)を伸ばしてどんどん横に広がっていくので、グランドカバーとしての能力も非常に高いです。やや湿った場所でもよく育つので、日陰のグランドカバーとして本当に重宝しますよ。
アジュガ以外にも、半日陰で活躍してくれる頼もしい仲間がいます。
- リシマキア: サクラソウ科の植物で、品種が非常に豊富です。グランドカバーとして人気なのは、黄金葉が美しい‘オーレア’や、濃い銅葉の‘ミッドナイトサン’ですね。‘オーレア’は日陰をパッと明るくしてくれますが、強すぎる日差しでは葉焼けすることがあるので注意が必要です。アジュガより少し湿気を好む印象があります。
- ツルニチニチソウ(Vinca major): キョウチクトウ科のつる性植物で、名前の通りつるを伸ばして地面を覆います。光沢のある緑の葉が美しく、春には紫や白の可憐な花を咲かせます。生育が非常に旺盛で、日陰の斜面などを覆うのにもぴったりです。
狭いお庭でも、こうした日陰に強い植物を上手に使って、空間を有効活用している方も多いですね。
日陰を活かした庭づくりや、狭いスペースでのレイアウトについては、狭い庭を花いっぱいにする育て方と超おしゃれレイアウト術の記事でも少し触れていますので、よければ参考にしてみてください。
背の低い花ガーデニングの管理術
さて、お気に入りの背の低い花々を植えたら、次はそれを美しく、健康に維持していくための管理が大切になります。「植えっぱなしOK」な品種が多いとはいえ、日本の高温多湿な環境で、意図した通りの低い草姿を保つためには、やはりある程度の人為的なコントロール(お手入れ)が必要になってきます。
特に「低くこんもりと保つ」ことや、「夏の蒸れを防ぐ」ことが、成功のための重要なポイントになってきますね。
一年草を低く保つ摘心のコツ

ペチュニアやカリブラコア、スーパーアリッサム、マリーゴールドといった一年草(またはそれに準ずる扱いをされる植物)は、特に春に苗を買ってきて植えた後、放っておくと縦にひょろひょろと伸びてしまいがちです(これを「徒長」と言います)。
植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があり、一番てっぺんの芽(頂芽)に栄養を集中させて、上へ上へと伸びようとします。これを放置すると、株元はスカスカで、先端にだけ花が咲く…というアンバランスな姿になってしまいます。
そこで重要になるのが「摘心(てきしん)」、いわゆるピンチという作業です。
摘心とは、その頂芽(茎の先端の柔らかい芽)を指や清潔なハサミで摘み取ること。こうすることで頂芽優勢が破られ、植物は「上に行けないなら横に行こう」と判断し、それまで眠っていた葉の付け根にある脇芽(わき芽)を成長させ始めます。
摘心の絶大な効果
- 茎が1本→2本、2本→4本…と倍々に増えていく。
- 結果として、株全体が横に広がり、こんもりとしたボリュームのある姿になる。
- 枝数が増えるため、当然、咲く花の数も格段に増える。
摘心の具体的なやり方と時期
時期:苗を植え付けて、しっかり根付いたなと感じる頃(植え付け後1〜2週間程度)がベストです。花が咲き始めていると「もったいない!」と感じるかもしれませんが、ここは将来のためにグッとこらえます。
方法:株元から数えて、しっかりした葉(本葉)が3〜4節(6〜8枚)ほど残る位置で、その先の柔らかい先端の芽を摘み取ります。必ず、葉の付け根(わき芽が出るところ)の「上」でカットしてください。
この一手間をかけるだけで、数週間後の株のボリュームがまったく違ってきます。最初は勇気がいるかもしれませんが、ぜひ試してみてください。
シュラブ(低木)で庭に立体感を
背の低い花々(草花)だけで構成する「お花のカーペット」のようなお庭も素敵ですが、ともすると全体が平面的で、どこか物足りなさを感じることもあるかもしれません。
そんな時におすすめなのが、シュラブ(Shrub)=低木の活用です。
シュラブは、一年草や宿根草といった「草花」とは違い、「木」の仲間です。そのため、数年、数十年と時間をかけてゆっくりと成長し、お庭の「骨格」や「立体感」を作ってくれる、非常に重要な存在になります。
「庭に木を植えるのは手入れが大変そう…」と思うかもしれませんが、ガーデニングで使われるシュラブには、大きくならずにコンパクトな樹形を保つ「矮性(わいせい)品種」がたくさんあります。
ガーデンデザインにおけるシュラブの役割
- 高低差(リズム)を生む: 地面を覆うグランドカバー(低い)と、シュラブ(中くらい)があることで、庭に視覚的なリズムが生まれます。
- 背景となる: シュラブの葉色や質感が、手前に植えた草花の美しい花色を一層引き立てる背景(キャンバス)の役割を果たします。
- 季節のアクセント: 花が美しい品種(リキュウバイ、低木バラ)や、葉色が変化する品種(アベリアなど)は、季節の移り変わりを教えてくれるアクセントにもなります。
おすすめのコンパクトなシュラブ
- リキュウバイ:春に咲く純白の清楚な花が美しい落葉低木。樹高もあまり高くならず、株立ち状に育つので、狭い場所にも植えやすいです。
- 低木バラ(ドワーフ・ローズ):最近は病気や寒さに強く、育てやすい品種が本当に増えました。背の低い草花との相性も抜群です。
- アベリア:‘コンフェッティ’や‘ホープレイズ’などの斑入り品種は、葉色が美しく、剪定にも強いので形を整えやすいです。
- コニファーの矮性品種:‘ブルー・スター’など、成長が非常にゆっくりで丸くまとまる品種は、モダンな庭のアクセントにもなります。
こうしたシュラブを花壇の背景や角、アプローチの脇などにアクセントとして取り入れると、ガーデンデザインにぐっと深みと安定感が出ますよ。
クラピアとシバザクラの比較

「背が低く、地面をピンクや白の花で覆い尽くす」というイメージから、よく比較されるのがクラピアとシバザクラです。どちらも非常に人気がありますが、性質がまったく異なるので、植える場所の目的や環境に合わせて選ぶことが大切です。
一番の違いは、やはり「踏みつけへの強さ」と「管理の手間」かなと思います。
クラピアは、在来種のイワダレソウを品種改良して作られた日本生まれの植物で、その高い被覆力や耐踏圧性が特徴です(出典:クラピア【公式サイト】『クラピアとは』)。
| 比較項目 | クラピア(Kurapia) | シバザクラ(Phlox subulata) |
|---|---|---|
| 植物分類 | クマツヅラ科(イワダレソウ属) | ハナシノブ科(フロックス属) |
| 踏みつけ耐性 | 非常に強い(芝生の代替になる) | 弱い(頻繁な踏みつけには耐えられない) |
| 開花期 | 初夏〜秋(比較的長い) | 春(4月〜5月頃) |
| 雑草抑制力 | 非常に高い(繁殖力旺盛) | 高い(密に茂れば) |
| 主な用途 | 人が歩く場所、芝生の代替、法面 | 花壇の縁取り、石垣、観賞用の斜面 |
| 冬の様子 | 地上部が枯れる(休眠する)ことが多い | 常緑(葉は残る) |
| 管理の注意点 | 繁殖力が強すぎる場合がある | 蒸れに非常に弱い、花後の刈り込み推奨 |
結局、どっちを選ぶべき?
これはもう、「植える場所で人が歩くかどうか」で決めるのが一番分かりやすいと思います。
- 人が歩く場所・芝生の代わりにしたい場合: 迷わずクラピアです。シバザクラではすぐに擦り切れて枯れてしまいます。
- 主に観賞用・花壇の縁取り・石垣の場合: シバザクラがおすすめです。春の花が一面に咲き誇る様子は圧巻の一言です。
切り戻しで蒸れを防ぐ管理方法

背の低い植物、特に地面を密に覆うグランドカバープランツにとって、最大の敵は「蒸れ」です。地面近くで高密度に茂るため、どうしても株元の風通しが悪くなりがちです。
特に、高温多湿な日本の梅雨時期や真夏は、植物にとって非常に過酷な環境。株元が蒸れて葉が黄ばんだり、枯れたり、ひどい場合にはカビが生えて腐ってしまったりすることも…(私もこれで何度かアジュガやシバザクラをダメにしてしまいました)。
そこで、摘心と同じくらい(あるいはそれ以上に)重要なのが「切り戻し」という作業です。
切り戻しは、伸びすぎた枝や茎、花が終わった部分などをバッサリと切って、株の形を整える作業のこと。目的は主に3つあります。
-
- 樹形(草姿)の調整: 花が咲き終わって形が乱れてきたり、徒長してだらしなく伸びてしまった株を、コンパクトに整えます。
- 風通しの確保(蒸れ・病害虫予防): これが最重要目的です。不要な枝葉を減らして株元まで風が通るようにし、湿度を下げることで、蒸れによる腐敗や病害虫の発生を未然に防ぎます。
- 再開花の促進: 花が一段落した後にエネルギーの消耗を抑え、新しい芽(次の花芽)の成長を促し、再び花を咲かせる(二番花、三番花)ために行います。
切り戻しの時期と深さ
切り戻しは、目的に応じて時期と切る深さを変えるのがコツです。
-
-
- 梅雨入り前(5月下旬〜6月): これが最も重要です。夏越しと蒸れ防止のため、花が終わった品種から順次、思い切って株の1/2〜1/3程度まで深く切り戻します。元気な葉を必ず残すのがポイントです。
- 夏(8月頃): 夏バテして形が乱れた株を整え、秋の再開花を促すための切り戻しです。ただし、真昼の猛暑日を避け、朝夕の涼しい時間帯に行います。秋の花に備えるため、切りすぎず1/3程度の浅めに留めることが多いです。
- 花後(随時): 花が咲き終わった枝(花がら)をこまめに切り取る作業と同時に、軽く形を整える程度の切り戻しです。
-
切り戻しに使うハサミは、常に清潔なものを使ってください。汚れたハサミを使うと、切り口から病原菌が侵入し、かえって植物を弱らせる原因になります。私は、作業の前後にキッチン用の漂白剤を100倍程度に薄めた液でハサミの刃を消毒するようにしています。とても重要なので、ぜひ習慣にしてみてください。
病害虫対策と木酢液の使い方

植物が地面に近く、密集していると、どうしても病害虫のリスクは高まります。風通しが悪くなりがちな株元は、ナメクジやダンゴムシ、ヤスデなどの格好の隠れ家になってしまいます。
特に注意したいのが、以下のような病害虫です。
-
-
- コナガ、アオムシ類:スーパーアリッサムなどアブラナ科の植物は特に狙われやすいです。
- ダンゴムシ、ナメクジ:新芽や柔らかい花びらを食害することがあります。
- アブラムシ、ハダニ:風通しが悪いと発生しやすく、植物の汁を吸って弱らせます。
- うどんこ病、灰色かび病:湿気が多いと発生しやすいカビ(糸状菌)による病気です。
-
日々の観察で早期発見し、被害が小さいうちに対処するのが一番です。アブラムシなどは手で取り除いたり、水で吹き飛ばしたりもできますが、大量に発生してしまった場合は、薬剤(殺虫剤・殺菌剤)を使うのも一つの手です。
薬剤の使い分け
-
-
- 予防・発生初期(粒剤): オルトランDX粒剤など、株元に撒くタイプの浸透移行性殺虫剤が便利です。植物が根から薬剤を吸い上げ、体内に成分が行き渡るため、内側から害虫(特に汁を吸うアブラムシや、葉を食べるコナガ)を防除できます。
- 発生時(スプレー剤): ベニカXファインスプレーなど、殺虫・殺菌の両方の効果があるスプレー剤は、発生した害虫や病気を直接退治するのに適しています。葉の裏までしっかりかかるように散布するのがコツです。
-
木酢液(もくさくえき)の活用
また、薬剤とは少し違いますが、私が剪定や切り戻しの後、あるいは植物が少し元気がないなと感じた時によく使っているのが「木酢液(もくさくえき)」です。
木酢液は、炭を焼くときに出る煙を冷やして液体にしたもので、独特の燻製のような香りがします。これ自体は肥料や農薬ではありませんが、以下のような効果が期待できると言われています。
- 土壌の有用な微生物を増やし、土壌環境を改善する。
- 植物の根の張りを良くし、肥料の吸収を助ける。
- 植物自体を元気にし、病害虫への抵抗力を高める。
- (そのニオイによる、一時的な害虫忌避効果)
私は規定の倍率(製品によりますが、3000倍〜5000倍など、かなり薄めます)に希釈して、水やり代わりに株元に与えたり、切り戻しでストレスがかかった植物に与えたりしています。植物の「活力剤」のようなイメージですね。
害虫対策や土壌改良については、例えば庭のアリ対策に関する記事でも触れていますが、まずは風通しを良くして、病害虫が発生しにくい環境を作ってあげることが何より大切かなと思います。
背の低い花ガーデニング成功の鍵
最後に、背の低い花を使ったガーデニングを成功させるための、そして何より長く楽しむための鍵を、私なりにまとめてみたいと思います。
それは、「初期の仕立て」と「環境制御としての剪定」、そして「日々の観察(コミュニケーション)」の3つかなと思います。
-
-
- 初期のボリューム形成(摘心): 特に一年草は、苗が小さいうちに「もったいない」の心を鬼にして(笑)摘心を徹底すること。これが、縦ではなく横にこんもりと茂る、理想的な株姿の基礎になります。この一手間を惜しまないことが、数週間後の景色を大きく左右します。
- 環境制御としての剪定(切り戻し): 特に日本の多湿な環境では、「蒸れ」が最大の敵です。「植えっぱなし」という言葉に甘えず、梅雨前には必ず深い切り戻しを行い、風通しを確保してあげてください。これは景観のためだけでなく、植物を病気から守るための「環境整備」であり、ガーデナーの重要な仕事だと思います。
- 日々の観察(植物との対話): 地面に近いため、コナガやダンゴムシの被害、蒸れの兆候など、トラブルが起きやすい場所でもあります。毎日少しでもいいので植物の顔色を見て、「水は足りてるかな?」「葉っぱが黄色いけど、どうした?」「虫がいないか?」とチェックする習慣が、早期発見・早期対処に繋がります。
-
背の低い花々は、お庭の主役(シンボルツリーや華やかなバラ)を引き立てる名脇役であり、同時に雑草対策や土壌保護といった実用的な役割もこなす、本当に働き者な存在です。
ぜひ、ご自身の庭の日当たりや土壌の環境に合った品種を見つけて、お庭の足元から彩る素敵なガーデニングを楽しんでくださいね。